サクリファイス

2007年10月24日 読書
【近藤 史恵 新潮社】

なにやら、『サクリファイス』(=犠牲)という題名の滅法面白いロードレースを題材にしたミステリーがあると聞いて探していたんだが、本屋ではどこも売り切れ(増刷が間に合ってない?)、図書館では順番待ちが多くていつになるか分からない状態になっており、こりゃそのうち本屋で見つけたら速攻立ち読み(ハードカバーなので買う気はもとよりない!)しなきゃなと思ってたら、運よく友人から借りることが出来た。

シンプルな話である。ミステリーというジャンルに入れるのはもったいないが、たしかに本年度のベストに選ばれてもおかしくない出来である、ずばり面白い。

日本人にはあまりなじみのない自転車レースの世界。それは、エースを勝たせるためにチームメイトが犠牲となっていく競技。そこで、アシストとして犠牲になる役割こそ自分に向いていると感じている主人公白石。レースを転戦しながらも深まっていく疑惑、ライバル、駆け引き、昔の恋、そして謀略。

シンプルな文章がいい。それでいて要領よく的確にレースを表現している。レースの駆け引きも面白いし、なかでも他チームとのレース中の会話や交流がまた良い。ミステリーの部分がなくても青春小説として充分楽しめるが、最後に題名の本当の意味が明かされていくときに、心地よい驚きと感動を得られる。スピードに乗ってあっという間に読めてしまうのが残念といえば残念(贅沢だ)。

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