【貝谷 久宣 ちくま新書】

ここ10年ぐらいだろうか、ウツ関係の本を読んでいると、いままでの抗ウツ薬がまったく効かないタイプのうつ病の話を目にすることが増えてきた。「擬態うつ」「うつ気分」「プチうつ」「三十代うつ」とか、いろいろな名前で呼ばれていたが、それらの多くの部分はこの本で取り上げられている「非定型うつ病」なのであろう。

なにしろこの「非定型うつ病」ときたら、気分反応性があり自分にとって楽しいことがあるとうつ気分が無くなったり、それなのに都合の悪いことに対してはすぐにうつ症状がでてきて、ちょっとした自分を傷つける言葉には過剰な反応を示し落ち込んだり怒り狂ったりと周囲の人にとっては、病気なのか単なる困った人なのか判りかねるという大変に面倒くさく、またはっきりしない病気なのである。

本書は、その「非定型うつ病」について、筆者の臨床例や各国の研究データをもとに分かりやすく解説したものである。データの出典がはっきりしていること、著者自身の意見にはそうだとことわりがあること、治療方法(薬)についても詳しいことなどなかなか安心して読める内容になっており、自身や身の回りに心当たる症状の人がいる場合には参考になるのではないかと思います。

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