【原 研哉 岩波書店】

知り合いに薦められて読んだ、面白い。2003年の本だが、すでにこれはデザインについての定番本といっても良いのではないだろうか、内容もさることながら簡潔かつ美しい文章、そして著者自身が手がけたという装丁も素晴らしい。

とりあえず、本書の帯にも載っている第一章冒頭の文章を引用しておく
「デザイン」とは一体何なのか。これは自身の職能に対する基本的な問いであり、この問いのどこかに答えようとして僕はデザイナーとしての日々を過ごしている。二一世紀を迎えた現在、テクノロジーの進展によって、世界は大きな変革の渦中にあり、ものづくりやコミュニケーションにおける価値観が揺らいでいる。テクノロジーが世界を新たな構造に組み換えようとするとき、それまでの生活環境に蓄積されていた美的な価値は往々にして犠牲になる。世界は技術と経済をたずさえて強引に先へ進もうとし、生活の中の美意識は常にその変化の激しさにたえかねて悲鳴をあげるのだ。そういう状況の中では、時代が進もうとするその先へまなざしを向けるのではなく、むしろその悲鳴に耳を澄ますことや、その変化の中でかき消されそうになる繊細な価値に目を向けることの方が重要なのではないか。最近ではそう感じられることが多く、その思いは日々強くなっている。


これは、デザインを志す人だけでなく、より多くの人に読まれるべき本であると思う。デザインとはなにか、著者の取り組みを通じで教えられることは多い。

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