【朝日新聞特別報道チーム 朝日新書】

2006年7月31日より朝日新聞で開始された「偽装請負」追求キャンペーンは、たしかに社会的なインパクトがあり、それまで是正勧告を受けても企業名が出ないのをいいことにおざなりな対応だった大企業の喉元に刃を突きつける効果があった。それから一年、たしかに現場では偽装請負や二重派遣について神経を尖らせる雰囲気が出来てきている(それでも、気にしないところは気にしないんだけれども)。

失われた10年に、痛みを伴ったリストラを断行した企業にとって、簡単に人を集められ、また簡単に切り捨てられる「偽装請負」というシステムは本当に魅力的だったろうと思う。そして、実際にそうした犠牲の上にV字回復という企業の回復があったのである。

実際には正社員の指示のもと業務を行いながら、書類上は請負会社に業務委託をしているという形式をとる「偽装請負」は、3年の後には正社員として雇い入れるか解雇するかの選択を迫られる派遣による人員確保に比べてはるかにローリスクで便利な労働力であった。しかし、それは企業にとってはいいことずくめでも、労働者にとっては、地位の安定しない先の見えない労働を強いられ続ける過酷な条件である。それを「企業は社会の公器」という企業が率先して行っていたことにまずは純粋な怒りを感じる。

いまでも、失われた10年の間に学校を卒業し厳しい就職活動を強いられたいわゆる「貧乏くじ世代」の若者は、この派遣、請負業界に多い。彼らの正社員化への道筋をどうにかつけていかないと、このままでは企業は新入社員の雇用を増やすだけになり将来に大きな禍根を残すことになるのではないかと心配する。ホント、わしなんかは、適当にやって適当な企業にもぐりこみのほほんと生きていることに関して、彼らに一抹のやましさというものを感じる。新自由主義もいいが、なんとか第3の道を考えましょうよ。

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