他人を見下す若者たち
2006年4月20日 読書心理学者の速水敏彦氏は近著『他人を見下す若者たち』(講談社現代新書)で、仮想的有能感という概念を使って若者の心の変容を説明している。若者を中心として、厳しい競争に曝される現代の日本人は、自己を肯定するために、すぐに他人を軽視したり否定したりする。そして、そのことによって根拠のない有能感を持つ傾向があると速水氏は主張する。また、ITメディアの影響を強く受けた人ほど仮想的有能感を持ちやすく、「2チャンネル」をよく見る人において仮想的有能感が強いという研究もある。私はこの本を読んで、なぜネット空間に下品な右翼的言説がはびこるのかについての説明を得たような気がする。
上記は、政治学者山口二郎が雑誌で書いてたことの一部だが、これを読んで本書を買うに値せずと思って放置していた自らの不明を恥じ、早速買って読んだ。
買うまでもなかった。
仮想的有能感という観点は秀逸だし、たしかにいろんなことを説明できると思う。筆者の言うような若者いるよね(若者以外でもいるけど)とだって思うさ。しかし、そんな若者が多い、増えてるってデータもなしに言われたってさ、どれくらいの多さやねんと突っ込みたくもなるだろ。着眼点はいいけどそれを裏打ちする調査(データ)の部分が本書を通じてお粗末すぎるんじゃないか。
特に第七章「日本人の心はどうなるか」は、おやじの繰り言としてはいいけど、絶対に心理学者が書くような文章ではないと思うぞ。一見筋道は通っているが、なんの検証もないことを自分の感覚だけで論を進めているのはいくらなんでも短絡的にすぎるだろうし、ごく一部の人間に当てはまる事例を、あたかも若者全体がそうであるかのような印象を与える書きっぷりは、これはもう危険水域に入ってると思う。
わし的には、この本を読んで、なぜネット空間に下品な右翼的言説がはびこるのかについての説明を得たような気がちっともしないので、もっとネット上での心理に焦点をあてた研究がでてこないかなと思うのです。
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