第2次大戦直後のアメリカ・プロレス界にて、「卑劣なジャップ」を演じて巨万の富を稼いだ伝説の悪役レスラー、グレート東郷。さまざまな資料や証言から浮かび上がるその男の素顔は、現代に何を問いかけるのか-。


発売されたときから読みたかったんだが、ついつい後回しにしてしまった。はい、大変面白かったです。

北朝鮮の出自を隠し続け日本国民のヒーローとなった力道山、彼が唯一敬語で話した相手、グレート東郷。謎に満ちたグレート東郷の出自に疑問を抱き、それを調べながらプロレスとナショナリズムについて考察を図るドキュメンタリー。本来は映像として企画されたものが活字で日の目を見たものだそうだ。

決して、著者が意図したプロレスとナショナリズムを巡るストーリーとしては成功しているとはいいがたいと思う。ただ、その迷走する取材活動の中で語られるプロレス史、関係者のインタビューなんかが非常に面白い。この語りの中で浮かび上がってくるのは、筆者の意図していたものではなく、むしろ昭和という時代の一側面なんだろうなとそんなことを考えた。

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