空爆以後のコソボ

本書の最初のほうは読むのに苦労した、ユーゴ情勢に無知なわしは、地名が出ても民族名がでてもそのたび最初の地図を見直していたし、ましてやUNMIKだのKLAだのKFORだのわけの分からん団体名が目白押しで何がなんだか分からなかったのだ。

しかし、読み通してこれは貴重なルポタージュであるとわかる。著者が現場で取材し見聞きしてきた現実がいかにわれわれが知る西側社会の情報と違っているか、現在もカタストロフィは続いているのにまったくニュースにはならない。そういった現実に光を当てた力作。

国際社会ではアルバニア系住民に対して民族浄化を行ったとして悪役になっているセルビア人であるが、空爆後は逆にアルバニア系組織によって誘拐、殺害され、また信じがたい人権侵害に晒されている。著者は旧ユーゴ各地を巡り、多くの組織のキーマンや市井の人々にインタビューし、複雑怪奇なセルビア、モンテネグロ、コソボ情勢をルポタージュしていく。

あと本書の文体について。最初、本書を読んでいておやと思った、ハードボイルドや冒険小説の文体なのだ。おそらくわしと読んできた本はかなりかぶってるんだろうなと思って読んだ。一つの物事を短い言葉でしかも的確に書こうとしているのがよく分かる。おそらく、かなり推敲したのだとおもうが、贅肉がなく動きのあるいい文章だと思う。

さて、これを期にユーゴ情勢ももう少し突っ込んで読んでみたい。とりあえず次は、多谷千賀子『「民族浄化」を裁く−旧ユーゴ戦犯法廷の現場から−』にいってみる。

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