帯に「この国に007が必要なわけは・・・・・・」とある、全然そんなこと書いてませんよ、どういう紹介だよ、まったく。

著者は元内閣情報調査室室長、宮沢、細川、羽田、村山、橋本の5人の総理に仕えた経験を持つ。当然、立場上(007が必要とはいってないが)日本はインテリジェンス機関の整備を図りより実効的な組織作りをするべきだという論調になる。ちなみにここで言うインテリジェンスとは、知性のことではなく「対象側が隠している本音や実態すなわち機密を当方のニーズに合わせて探り出す合目的的な活動」とされている。

わしのような基本的に国家権力を信頼していない人間にとっては、そういったインテリジェンス機関の整備ってのは、盗聴法や人権擁護法と同じで、国家に力を与えすぎるものとして聞いただけで拒否反応を起こしかけるが、著者はさすがにその畑で長くやってきただけあって話に説得力がある。

著者は、インテリジェンスは「毒」であると言い切る。そしてこれは社会の安全を守るために必要な「毒」であると。それを容認するに当たっては、●専門技能が必要であり、少量の毒で済ますこと●解毒のための社会的装置を同時に備えていること(筆者の具体的な例としては、30年たったらすべての文章を公開するといったような情報公開法の整備)、の二点が絶対に必要であると論じる。

なかなか面白かった、おかげでずいぶん洗脳された。本書は著者の実体験に基づいたものなので、政治読み物としても面白く読める。将来諜報活動に関わりたい人は必読。(そういや、わしも昔は『スパイのためのハンドブック』とかを読んでる諜報活動に憧れる若者だったんだ。)

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