メッセでやたらわしに話しかけてくる学生に名著だと勧められた本。今年の四月にでた新書なのでわしがチェックしてないはずはないのだが、どうも働くことの意味を説教臭く説いてくれる本だと思ったみたい。実際に読んでみると、現代社会の労働状況についていろいろな見地から考察されたとても刺激的な本でした。

しかし、しかしである、この訳文はいただけないな。わしは読んでいて回りくどい言い回しや、原文そのままの構文の日本語に何度も殺意を覚えたぞ。だいたい、学術的な文章でならいざ知らず、著者のような日本の雑誌や新聞によく著述する名の知られた人の文章を(しかも新書で)訳出するにあたって、こんな日本語として不自然な文章を許すなんぞあってはならないよな。訳者もそうだが、編集者は何をしているのだといいたい。

で、内容については(回りくどい日本語にもかかわらず)なかなか勉強になりました。わしも著者と考え方の立ち位置は同じ(つまり反ネオリベラリズムってことだ)だが、ひとつだけ同意できないのは、【避妊が一般化する以前、社会的安定を確保するために必要だった性的抑制は、自己満足の抑制を要求した他のすべての規範をも強化する効果を持ちました。性的な事項においてなんでも許されるとき、貪欲も含めた、他の欲望に関してもあらゆることが許されがちな社会が生まれます。】というくだりだ。どうしてそういう理路になるのかわしにはまったく理解不能である。
なんでこんなどうでもいいところに突っ込みを入れるのかといわれそうだが、ここだけ妙に頭に残ったからだ(以上)。

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