著者は、国民生活白書などを担当した官僚で現在は(財)世界平和研究所に出向中、そこで社会保障分野を担当。世界平和研究所ってなんか胡散臭い名前だなあと思いながらも、グーグル先生に聞いてみると、中曽根時代に設立された政策研究提言機関だそうで、先ごろ憲法改正試案なんかを発表してたのはなんとなく記憶にあるな。

まあ、それと本書とはほとんど何の関係もないんだが、本書は、日本の社会保障制度(公的年金制度、医療・介護保険制度、子育て支援策)について、その現状を分析し、公平と公正の観点から、身の丈にあったこれからの社会保障制度を提言していく。

いやあ、なかなかバランスの取れた視点で書かれており大変勉強になりました。なにより、偏った価値観からの制度作りを出来るだけ廃し、多様な価値観に対応できるように考えられていることに好感が持てる。公平と公正についても、公平=誰もが同じ公的サービスを受けることが出来る、公正=より多く負担したものがより多くサービスを受けられる、という観点から、その両立しがたいバランスを崩すことなく、不公平感を出来るだけ出さないような政策を求めて論を進めていく。

日本の社会保障制度は、年金問題を筆頭に崩壊寸前という印象を多くの人が共有していると思うが、そういう状況の中で現実的なオプションとしてどのような改革を進めていくべきかがよく分かる(それでも、甘めの将来展望ではあるが)。しかし、こういった提言がどれほど現実の改革に反映されていくのかは非常に疑問であるな。消費税はもっと上げていいからなんとかしようよ、とわしと同じように考えてる人は多いと思うんだがな(ちなみに本書では10%台後半を想定)。

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