著者は、銀行マンとして14年勤務した後、大学に入りなおして建築家を目指したが、なぜか今はノンフィクション作家をしている変り種(もしかしたら建築家でもあるのでしょうか)。

本書は、そんな著者が建築学科の学生のときに、北京でおこなわれた国際建築家連盟の世界大会に参加したときに感じた違和感から語りはじめられる。それは、その世界大会で採択された建築家の資格制度についての国際的な統一ルールが、たいした論議もないまま、政治的にアメリカ主導で決められたことによる違和感である。そこから著者が調べ上げ浮かび上がらせるのは、アメリカの自国の国益だけを考えた世界戦略である。そして、日本はまさにアメリカ様に食い物にされているのである。

日本の構造改革は外圧だのみっていうのは、よく言われてきたことだが、その外圧の正体を本書は見事に晒してくれる。たしかに改革により国民の利益となることも多々ある、しかしそれはアメリカがアメリカの利益のためにやっていることのたんなる副産物であるのだ。すべては、日米構造協議から始まっており、その押し付けの内容は『年次改革要望書』という誰でも読める公文書に記載されているのである。まったく、ここまでアメリカの覇権主義の内幕を見せ付けられると、(聞き飽きるほど聞かされた)日本はアメリカの属国であるという言葉がまた一段とリアルに聞こえますな。

というわけで、なかなか面白い本でありました。ただし、後半ちょっと論理が飛躍しているのと、感情的にアメリカをなじる文章が目立ってくるところが残念でした。あと、わしは筆者ほどは悲観的でもないし・・・アメリカさんはきっとそのうち自分のやってることで足下掬われるんじゃないかと思うな。きっと、やりたい放題もそんなに続かないだろうと(根拠まったくないんだが)。

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