早速読み返し始めたグイン・サーガであるが、背表紙の色は褪せ、紙は茶色になっておりなかなか年月を感じさせる。なんといっても25年ほど前の文庫本だもんな。

まあ、これからは一巻読むごとに感想ってのは避けたいと思うが、なかなか面白くそして感慨深かった。長大な物語が胎動を始めるこの巻は、いや、まさに剣と魔法の物語・ヒロイックファンタジーそのものであったのだな。いまや、グイン・サーガはヒロイックファンタジーとは呼べないものになっている、それは別に悪いことではなくて、ヒロイックファンタジーの要素を含んだ物語になっているというだけのことである。そしてこれはほんとに語り続けられるための物語なのであると思う。

わしは、グイン・サーガから逆にコナン・サーガやムアコックの一連のエターナルチャンピオンシリーズ(エルリックやコルムやエレコーゼやホークムーン)などのヒロイックファンタジーに入っていったのでえらそうなことは言えないが、この一巻はやっぱりそんな物語の匂いがしてとても懐かしい。あとがきでは(まだ自分のことを「ぼく」とよんでいた)栗本薫自身が、ヒロイックファンタジーへの想いを切々と書いている。そして、ヒロイックファンタジーについて素晴らしい解説をしているのでそのまま抜き出す。
ヒロイック・ファンタジー――それは、本質的に《夜》に属する物語である。夜と闇、呪文といかがわしい黒魔術、淫祠邪教と病んだ魂とに。
ヒロイック・ファンタジー――それは必ず、熱にうかされて見る悪夢の様相をその内にいつまでももっていなくてはいけない。
ヒロイック・ファンタジー――それは本質的に、成長して子供部屋を立ち去ってゆくことを忘れてしまった、狂った子供のおもちゃ箱であり、母の死をきくまいと自分の頭をうちぬいた明るい青い目(ほんとにそうでなくたってかまやしない)の大男が、その病んだ心の暗がりで見つけた妖女である。

うーん、やはりこんなの中学生で読んだら夢中になるのも仕方ないよな。

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