かなり毛色の変わったうつ病関連の本。

本書は、多くの人が漠然と不自然に感じていたことに一つの答えを出してくれていると思う。つまり、近年日本でうつ病患者が増えたり、メンタル休職者が増えた原因は、周りがうつ病のことについていろいろと騒ぎだしたからじゃないのかということだ。うつ病に対する情報の氾濫が、うつ病患者自体を作り上げているという感覚を持っていた人は実は多いのではないかとわしは思うが、著者はその考え方にデータ的な裏付けをしていく。

そして、問題なのは、その大々的なうつ病キャンペーンを影で先導しているのが製薬会社であるということだ。SSRI(選択性セニトロン再取り込み阻害薬)と呼ばれる儲かる新薬の登場以来、先行して認可されてきた国ではすでに同様のこと(患者の急増)が起こっているのである。

まあ、商売に結びついたキャンペーンとはいえ、これがいままでは見過ごされていたうつ病の初期発見につながり、重篤化する前に手が打てて効果が現れているのならいいのだけれど、実際には、今までは単純な気分障害で数ヶ月で医者になんかかからず自然治癒していた患者を掘り起こしている部分が多く、しかも治療効果が出ているように見えないというのが悩ましいところで、会社などでメンタル教育をすればするほどメンタル休暇をとる社員が増えてしまうというという悪循環を産んでしまっている。

著者は、淡々と事実と思われることを語るにとどめており、そのことに関する告発めいた文章は慎重に避けているが、たしかにこれは単純に非難すればいいとは言えないややこしい問題を抱えていると思う。製薬企業が新薬の普及を図ろうとするのは当たり前だし、むしろそれこそが社会的使命でもあるだろう。実際にうつ病に関する知識が間違っているというわけではないし、自殺防止に対し行政や企業が取り組もうとおもえば、うつ病対策は避けては通れない。こんな裏があるからメンタル教育がダメとは言えないので、こういったこともあるんだなという知識を持った上で今まで通りやっていくぐらいしかわしには思いつきません。ぐお、歯切れ悪い。


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